いまの職場は夜の8時頃には正面玄関が閉まっちゃうので、私たちはいつも裏口から外に出ることになります。
そのビルの裏口は、恐ろしいことにやつらの繁殖地らしいのですよ。
薄暗い裏口。その細い通路。そこにやつらは潜んでいるらしいのですよ。
G。
あの黒いやつが。
その目撃証言を聞いてからというもの、帰宅時が怖くて仕方ありません。
灰色のコンクリート塀に、なぜか動く黒いシミなんかあっても私には見えません。
足下に何か踏んだような感触があったとしても、靴の裏を確認するなんてことは絶対しないでしょう。
あぁ、なんて恐ろしい。
正面玄関から帰れる日がくるまで、私はがんばります。