先人の知恵

 帰宅の電車に乗ると、その車両はやけに混雑してました。
 原因はこの臭いにありそうです。
 車両の半分はガラガラで、残り半分はすし詰め。
 ガラガラの中央には、爆睡している兄さん。
 濁った水たまりに足を突っ込みつつ、座席にもたれかかっていました。
 さすが終電間際です。
 いま彼をうらやましいと思うことがあるとするならば、爆睡できることと、爆睡しているが故にこの臭いをかがなくてよいことでしょう。
 こんなとき私は、先人の知恵に頼らざるを得ません。
 偉大なる先人達は、碁を打つことで手術の際の麻酔にしたと聞きます。
 ならば。
 私はおもむろに雑誌を開きます。
 そしてその雑誌に集中し、嗅覚を遮断するのです。
 ありがとう、偉大なる先人達。
 私は先人の知恵に守られつつ、無事に駅までたどり着いたのでした。
 
 ちなみに今日の麻酔は、週刊アスキー
 おかげで1時間で読み終わっちゃいました。