曖昧な時の料理

階下の大きな音で目覚めた朝6時。
「たぶんこの音は父が玄関の杖を倒した音だろう。いつものことだ」
と気にせず二度寝してしまった私。

その1時間後に目覚めた時には、父の姿はありませんでした。

昨日は台風で買い物に出かけられなかったので、雨の合間にスーパーにでも行ったのでしょう。
いつも行ってる近所のスーパーはまだやってる時間ではないので、はてさてどこに行ったのやら。
朝からこんな感じだったので、だいぶ曖昧だったのでしょうね。

本日はリハビリの日なのに、帰ってくるなり何か料理をし始めた父。
「あと30分くらいで迎えが来ちゃうんだから帰ってからにしなよ」
と言っても機嫌が悪くなるばかり。
やってることもおかしな感じで、カニカマはビニールがついたまま鍋に入れてるし、その鍋にはフタをしたまま水を入れようとしてるし……。

極めつけは調味料を入れた時。

鍋に塩コショウを入れようと、詰め替え用の袋をハサミで切って開けていたのですが、その中身をドバっと鍋へ。
新品を全部ぶちまけですよ。
私が驚いていると、さらにその鍋に水を入れて手でかき回し、そのまま水を捨ててました。

いったい何がしたかったんでしょう。

中学卒業後すぐに寿司職人の道に入り、母が病に倒れてからは我が家の台所を自分の城としていた父。
料理一筋の人生を送っていたはずの父が、料理でこうなってしまうとは。

つくづく認知症は残酷な病気ですなぁ……。