コンプリートヒールの魔法を憶えた時は、ほんとに嬉しかった。
「これで一人前のクレリックになれた」
と喜んだものですよ。
どんな危険なエリアでの冒険でも、この魔法はいつも私の側にありました。
「10秒間だけ生きててください!」
前衛の戦士に頼みこみ、必死の詠唱の末に仲間の傷を完全に癒していった私。
特に私は、常にマナ不足に悩んでいましたからね。
マナ効率のよいこの魔法は、困難な冒険でこそ手放せないシロモノでしたよ。
でもさすがに75レベルになってみると、このCHの力不足を実感させられてしまいました。
「この魔法を唱えれば、仲間の傷を完全に癒すことができるんだ」
そう教えられた日から長い永い冒険の日々を越え、いまやCHでは完全に癒すことができなくなってしまいましたからねぇ。
成長を喜ぶと同時に感じる一抹の寂しさ。
慣れ親しんだ魔法を手放していくのも、前に進むためには必要なことなんですなぁ。
<了>