父の城だった台所に父が戻ってきた

もともと父は仕事一筋の人間でした。
若いうちから板前修業の道に入り、精進を重ね、母と一緒になってからは自分の店を二人三脚で切り盛りする。

その仕事こそが、自分の存在意義みたいな感じの人でした。

その父が、母が病に倒れて闘病生活に入ってからは、店をすっぱり畳んで看護にオールイン。
仕事を辞めた代わりに、母の看護と家事が自分の存在意義に変わったんですね。
特に板前のプライドなのか、台所は父の城になってまして、子供達には一切触らせない勢い。
当初は母もやってなかった朝ごはんの用意までしてくれるほどでしたよ。
「自分たちでやるから、朝くらいはゆっくりしてくれ」
と、奪い返すのが大変でした。*1

そんな父が昨年の夏に体調を崩してから、さっぱり料理をしなくなってしまいました。
他のことはともかく料理までしなくなってしまったのは、心底父の病状の深刻さを感じさせるものでしたよ。

だったのですが、年末からここ数日、すごい久しぶりに父が台所に立って、お雑煮とか年越しそばとか作ってくれました。
まぁ、お雑煮を作る時はお餅をグリルで焼こうとして、ぜんぜん別のヒーターの電源を入れてしまって火事になりかけたり、年越しそばは日付を間違えて12/30に年越ししちゃったりしましたが…。

でも料理をしようという気になっただけでも大進歩です。

こういった日常生活の行動がリハビリにもつながるそうなので、少しずつでも体を動かせるようになってくれるといいですなぁ。

*1:これも仕事一筋だったことの裏返し。父は仕事に未練たらたらで、「お前は仕事してて羨ましい」と何度も言われました。私自身は仕事なんかしたくない方で、ある程度のお金がたまったら趣味に生きようと思っていたのでまったく共感できませんでしたが。ただそのつもりでお金を貯めていたおかげで、介護離職することになってもなんとかなってるので、何が幸いするかわかったもんじゃないですね。